フロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨匠とされる「アルフレッド・アドラー」の教えを、悩める青年(古賀史健)と哲人(岸見一郎)との対話形式で解説した本です。続編の「幸せになる勇気」を併せると、180万部を突破している大ベストセラーです。
たいへん平易な言葉での対話形式で、誰の日常にもありそうな問題を題材としているため、アドラー心理学の概要を理解するための入門書としては最適でしょう。
- 岸見一郎:哲学者「日本アドラー心理学会顧問」アドラー心理学の第一人者で、アドラーの著作も多数翻訳。
- 古賀史健:(株)バトンズ代表 インタビュー・スタイルの執筆を専門とするライター。
「嫌われる勇気」 自己啓発の源流「アドラー」の教え 著)岸見一郎 古賀史健(ダイヤモンド社)
目次
- 第一夜 トラウマを否定せよ
- 第二夜 すべての悩みは対人関係
- 第三夜 他者の課題を切り捨てる
- 第四夜 世界の中心はどこにあるか
- 第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる
「嫌われる勇気」内容について
第一夜 トラウマを否定せよ
この章では「アドラー目的論」について議論されています。「目的論」とは、過去の出来事に対してその「原因」を追求するのではなく、自分で選んだ “いま” さらに “今後の人生” の「目的」を考えるべきである、というものです。
つまり、「これまでの人生においてどんなことがあったとしても、これからの人生に何の影響も及ぼさない」というのが、アドラー目的論であり、トラウマを明確に否定しています。
第二夜 すべての悩みは対人関係
アドラーは、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言しています。そして、アドラーが唱える「人生のタスク」から逃げないことで、「対人関係の悩みから解放される」と説いています。
「人生のタスク」とは、人ひとりが社会の中で生きていこうとするとき、避けて通ることのできない対人関係のことで、「仕事のタスク」「交友のタスク」「愛のタスク」に分けられ、中でも「愛のタスク」が最もむずかしい、と説いています。
第三夜 他者の課題を切り捨てる
アドラー心理学では、他者からの承認を求めることを否定しています。これは、人生において最も重要なことは「自分の人生を生きていくこと」であって、例えば「他者からどう思われているか?」というような「他者からの評価」などまったく考える必要はない、ということを説いています。
「他者からの承認や評価」というものは「他者の課題」であり、自分ではどうにもならないこと。「自分ではどうにもならないことに大切な人生を費やすのではなく、自分の信じる最善の道を歩んでいこう」ということを説いています。
つまり、「他者からの承認や評価」を気にすることなく、自分の生き方を貫くためには「嫌われる勇気」が必要だということです。
第四夜 世界の中心はどこにあるか
この章では、「共同体感覚」について議論しています。共同体感覚とは、良い対人関係を築くための最も重要な指標であり、最小単位は「私とあなた」。
自分はあくまでも共同体の一部であることを自覚し、「課題の分離」をした上で「人生のタスク」に立ち向かうことによって、より良い対人関係を築くことができる、と説いています。
また、対人関係について「横と縦」の関係を例に、理想的な対人関係を築くには、やはり「勇気が必要」だということについて議論しています。
第五夜 「いま、ここ」を真剣に生きる
この章では、「共同体感覚」を持てるようになると、さらに「自己受容」「他者信頼」そして「他者貢献」の3つが必要になると説いています。
- 自己受容とは:自分の力で「変えられるもの」に注目していくこと。
- 他者信頼とは:条件をいっさい付けることなく、他者を信じること。
- 他者貢献とは:「自分は誰かの役に立っている」という感覚 “貢献感” を持つこと。
第五夜は以下のような感じでまとめられています。
過去にどんなことがあったかなど、あなたの「いま、ここ」にはなんの関係もないし、未来がどうであるかなど「いま、ここ」で考える問題ではない。
中略
目標などなくてもいいのです。「いま、ここ」を真剣に生きること、それ自体がダンスなのです。
中略
人生は常に完結しているのです。
人生とは、「いま、ここ」をくるくるとダンスするように生きる、その瞬間を繰り返し生きてゆくことであり、「いま、ここ」が充実していれば、それでいい。
「自分は誰かの役に立っている」という “貢献感” さえ持っていれば、迷うことはないし、何をしてもいい。嫌われる人には嫌われ、自由に生きてかまわない。自分の生き方を変えられるのは自分だけである。と、このような内容でまとめられています。
「嫌われる勇気」を読んだ感想
哲学書でありながら、誰もが読みやすく理解しやすい “話しことば” で書かれているので「大ベストセラー」になったのでしょう。しかし、この教えを自己啓発の材料にしようとしても、実際に行動に移すことは容易ではありません。
アドラーの教えは、人が「人として生きる」ための根本にあるべき思想だと考えます。すべての現代人がアドラーの教えを実行できるのであれば、きっと「争いごとのない平和な世の中で、地球上は幸福感で満たされることでしょう。」
しかし、現代人の中で「アドラーの教え」を実行できる人は、ごくごく一部の人たちでしょう。なぜなら、現代人は自己中心的な考えのもとに長く生きすぎてしまっているからです。
多くの人が、自分が生きていくための目標に基準を設けて、他人と比べながら人生を歩むということを当たり前としてしまったのです。そこへいきなり「他人からの評価を気にしたり、勝ち負けに執着することを今すぐやめなさい」と言われても、そこは長年かけて培ってきた性分ですので、なかなか改善できるものではありません。
「アドラーの教え」を実行に移していける人というのは、もともとそういった素質を備えて生まれてきた人たち、もしくは幼少の頃から「自分ための人生を生きる」ことができる環境が整っていた人たちだけではないでしょうか。
だからといって、あきらめるのではなく、「いまからでも遅くない、いま、ここから自分は変わる」という気持ちをもって毎日を生きていく、これを繰り返し積み重ねることで少しずつ自分のこころに変化が現れてくるのだと思います。
また、「第四夜 世界の中心はどこにあるか」の一節に “叱ってはいけない、ほめてもいけない” とのタイトルで「横の対人関係」を説明している部分があります。ここでは「親子の関係」を例にあげて、「子供との上手な向き合い方」がわかりやすく説かれています。
この課題は、親自身の心掛けひとつで実行できるはずです。子供が幼少の頃から「アドラーの教え」を参考に環境作りをしてやれば、「嫌われる勇気」を持った大人に育つはずです。
そして、これから育っていく子供たちが、大人になった頃には「自分は誰かの役に立っている」という “貢献感” を持ち、その人たちによってもたらされた「対人関係の悩みなどない、幸福感あふれる世の中」になっていることを願ってやみません。
そのためにも少しでも多くの人に、この「嫌われる勇気(ダイヤモンド社)」を一読していただきたいと思います。
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「幸せになる勇気」 自己啓発の源流「アドラー」の教えII 著)岸見一郎 古賀史健(ダイヤモンド社)
目次
- 第一部 悪いあの人、かわいそうなわたし
- 第二部 なぜ「賞罰」を否定するのか
- 第三部 競争原理から協力原理へ
- 第四部 与えよ、さらば与えられん
- 第五部 愛する人生を選べ
「幸せになる勇気」内容と感想
「嫌われる勇気」自己啓発の源流「アドラー」の教えの続編で、構成は前作同様、悩める青年(古賀史健)と哲人(岸見一郎)との対話形式で書かれています。
テーマは、「人間にとっての幸福とはなにか?」という問いかけに対する答えである「愛」と「自立」です。前作で図書館の職員だった青年が、続編「幸せになる勇気」では “アドラーの思想に感銘を受けて、母校の中学教師に転職した” という設定で書かれています。
基本的に訴えていることは、前作「嫌われる勇気」と変わりありません。ただ、続編「幸せになる勇気」は、間違った解釈をしたまま「アドラーの教え」を生徒たちに実行したため、取り返しのつかないことになってしまった、という青年の失敗例をもとに書かれています。
この例は、教職に身を置く人のみならず、指導する側に立つ人にも参考になる内容になっていると思います。また、子育てに不安を感じている「お母さん、お父さん」にもおすすめします。
続編「幸せになる勇気」だけ読んでも、アドラーの思想の基本は理解できるでしょう。ただし、理解しただけではなにも変わりません。「幸せになる勇気」を持って実行することが重要ですから、できることから少しずつ始めてみませんか?
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