あなたは日々の生活の中で「慮り(おもんぱかり)のこころ」を大切にしていますか?
得ることに執着したり、他者から与えられるばかりの人生を送ってはいませんか?
すべてのものは「足りることになっている」
「ギブ・アウェイ」の儀式に参加する際、みなが各々に大切にしているものを持ち寄ります。生活用品を提供する人、手作りの料理や小物を持ってくる人など、自分にできる範囲で持ち寄り参加します。
現代の日本人の感覚であれば、料理や小物は「どれくらい作れば足りるのか?」と考えてしまいがちですが、インディアンは、そんなおごった気持ちはなく「今できる精一杯のこころを尽くせばよい」と考えます。そして、あとは大いなる神秘である「ワカンタンカ」の意志に任せれば、調和がとれ不都合なしにすべてのものは「足りることになっている」と考えているのです。
たとえば、身内が亡くなって1年後の喪明けの「ギブ・アウェイ」で家財道具すべてを差し出す人も多くいるそうですが、それでも貧しい生活ゆえ、たいした数にはなりません。しかし、「形見」となるものは訪れた人たちそれぞれに、うまく行き渡るそうです。必ず「足りることになっている」のです。
人は「得る」ことに執着すると、すべてを失ってしまう
これは「ギブ・アウェイの精神」の根っこにある「慮りのこころ」にあるのではないでしょうか。みなが欲しいものを好き勝手に持ち帰ったのでは、当然、不足が生じるはずです。そうならないのは訪れた人たちが、全体の人数を把握した上で、バランスを考えて持ち帰っているからです。
エゴや計らいを捨て、素直な気持ちで周りの人たちに尽くす。これこそが、現代人が失いかけている「慮りのこころ」ではないでしょうか。日本でも、その昔はこのような「こころ」のこもった生き方をしていたはずです。
「愛を求めすぎるものは力を失う、力を求めすぎるものは愛を失う」(インディアンの言葉)
人は「得る」ことに執着すると、すべてを失ってしまうのです。「与える」こと、人の役に立つことを偽善ではなく、こころ(魂)から行うことによって、人が生きていく上で最も大切なものを自然に得ることができるのです。
参考:「ともいきの思想 自然と生きるアメリカ先住民の「聖なる言葉」」著)阿部珠理(小学館新書)
参考:「自分を信じて生きる - インディアンの方法」著)松木正(小学館)
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