はじめて来店した客が、まず店内で最初にとる行動は「自分のお気に入りアーティストの作品がきちんと揃っているか」という確認です。そこで、あなたの店が自分の趣向に合っているか否かを判断し、言い方はあまり良くありませんが「店への合否」を決めてしまいます。
そして、合格だと判断した場合は「この店なら他にも自分好みの商品(作品)や未知のアーティストを発見できるかもしれない」と、客自らが期待することで「また来店してみよう」という気持ちになるでしょう。
しかし、お気に入りアーティストのアイテム数が少ない、もしくは在庫がないなどの理由で「不合格」と判断した場合は、二度とあなたの店を訪れることはないでしょう。一見(いちげん)の客は、それくらいハッキリとした合否を一度の来店で下すのです。
この第3回「売上アップにつながる基本在庫」では、たった一度の来店で「不合格」なんて残念な判断を下されないために、客を受け入れるための最も重要な要素である「基本在庫」についてザッと述べたいと思います。
基本在庫としての商品は、必ず幅広いジャンルで揃えよう
第2回「商品知識は幅広いジャンルで!」の記事で述べたように、幅広いジャンルの知識が不可欠な理由は「幅広いジャンルの品揃えに対応するため」です。あらゆる客層に対応するためには、各メーカーが発行している「基本在庫チェックリスト」を参考に、あなたの店のベースとなる基本在庫を揃えていく必要があります。
不得意なジャンルで、どの商品をピックアップすれば良いのかよくわからない場合は、メーカーの営業担当者にアドバイスしてもらいましょう。ただ、営業の口車に乗って不必要な商品まで発注させられることのないように、日頃から営業担当者との信頼関係を築いておくことが必要です。
あなたもご存じのとおり、基本在庫というものはそれほど動きのある商品ではありません。しかし、一見(いちげん)の客を取り込むためには必要なアイテムですので、無視することはできません。
一見客が購入する商品の傾向として、一番多いのはやはり「新譜」でしょう。通りすがりにお気に入りアーティストの新譜が発売されていたことを思い出し、ふらっと立ち寄るパターンです。そして、お目当ての新譜があれば購入してもらえるでしょう。
しかし、重要なのはこのはじめての来店を「また次の来店につなげられるかどうか」ということです。そして、そこで必要になるのが基本在庫と呼ばれる「定番商品」の充実した品揃えになります。
客は、お気に入りアーティストのこととなれば、店の販売員よりもずっと多くの知識がありますし、アーティストへの思い入れもそれぞれにあるはずです。ですから、客があなたの店の商品棚を見たとき、もし「新譜以外のヒットアルバム(定番商品)が歯抜け状態」になっていたなら、店への印象は一瞬で悪くなってしまうでしょう。
これでは、次の来店につながらないだけではなく「新譜すら購入してもらえない」という最悪の事態にもなりかねません。それは、同じ買い物をするのであれば「気持ちよく買い物をしたい」という客の心理に店が答えていないため「品揃えの悪いこの店で買うことはない」という気持ちになってしまうからです。その結果「何も購入することなく退店する」というケースは意外と多いのです。
このように、自ら客を「手ぶらで帰す」といった間抜けなことにならないように、基本在庫の重要性を理解し品揃えには十分に気を配りましょう。基本在庫商品は「新譜やヒット中の商品」のような目立った売上はありませんが、店にとってベースとなる「定番商品」ですので、必ず幅広いジャンルで揃えておきたいアイテムです。
ただし、「鮮度チェック(定期的な基本在庫の見直し)」は欠かさないようにしましょう。基本在庫が余剰在庫になってしまっては本末転倒です。
常に基本在庫のチェックを忘れずに
基本在庫は、必ず定期的にチェックして見直しましょう。基本在庫は定番商品とはいえ、ときの経過によって定番から外れていくものもあります。ですから、売れたからといってすぐに発注するのではなく、動向をよく見て判断するとよいでしょう。
商品が生ものであれば、鮮度が落ちると目に見えてわかるのですが、表面的には変化のない商品ですから「まだ発注するか、それとも切るか」そこを見極める勘を養うことも大切です。これは、基本在庫だけではなく、新譜も含めたすべての商品に当てはまることですね。
まとめ
【CD店舗売上アップ術】第3回「売上アップにつながる基本在庫」は、ここまでです。今回は日頃意外とおろそかになりがちな「基本在庫」について書いてみました。建物に例えると基礎の部分にあたるのが「基本在庫」です。時間に余裕があるときなどを利用して、チェック(見直し)作業することをルーティン・ワークにしましょう。
全体的に、いたって当たり前の内容になってしまいましたが、この「基本在庫」なくしては接客もできませんので触れておきました。
第4回は「好感をあたえる接客しやすい店づくり」について述べたいと思います。では、また次回。
【CD店舗売上アップ術】連載 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回(最終回)
音楽ソフト販売業の経歴はこちらにあります。
