さくらの花が満開となり、心地よい春を迎える時期になると、TVなどから聴こえてくる少し違和感のある言葉、それが「花散らしの雨」です。
この「花散らしの雨」という言葉は、最近になって一部の気象予報士らが「さくらの花びらが散ってしまうほどの、降雨や風が予想される場合」に視聴者に伝わりやすい造語として、便宜上使い始めたと思われます。耳にすると風情ある言葉のように錯覚してしまいます。
「花散らし」という言葉の本来の意味
しかし「花散らし」という言葉、本来はまったく意味合いの違った使い方をされていたのです。
広辞苑には、
(九州北部地方で)3月3日を花見とし、翌日若い男女が集会して飲食すること。
と、書かれています。
この文章のポイントは「若い男女」です。文章に含まれる意味を想像すると、若い男女が集まって開放感あるなか宴会を開くのですから、後の色事も含まれていると想像できます。ただ、あくまでも想像されるだけで今となってはハッキリと言い切ることはできません。
しかし、インターネット上で調べてみる限り、このような解釈が一般的なようです。ですから、よく耳にする「花散らしの雨」という言葉は「風情を感じさせる表現」としてはあまり適切ではないということになります。
日本の文化である「美しい日本語」をもっと大切にしましょう
現代の日本語の中に、同じように誤用が定着してしまっている言葉はたくさんあります。さらに、ごく一般的に使われている辞書の中には誤用を併記して「どちらでもよい」と記されたものをよく見かけます。これを見るたびに不快な気分になってしまいます。
やはり、明確に「正誤表示」をしていただきたいものです。時代の流れにともなって「変化してもよい言葉」と「絶対に変化させてはならない言葉」が存在するはずです。辞書をつくる側が「どちらでもよい」とはいったいどういうことなのでしょうか?
私も偉そうなことは言えませんが、せめてメディアには正しい日本語の使い方をしていただきたいものです。日本人である以上、日本の文化として昔から使われている言葉に対して「その言葉はもう死語だから」などと切り捨ててしまうことなく、大切に扱うことが必要だと思います。
世界の言語の中で、日本語のように「言葉一つの中に多くの意味が含まれている言語」は、あまりありません。現代の日本人は、自ら母国語である日本語を乱したり、粗末に扱うことなく、日本の文化である「美しい日本語」をもっと大切にしなくてはなりません。
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